店長のテレビ会議20年 -其の8-  恐るべし、MCU(多地点接続装置) その5

正月の社長年頭の挨拶約100会議をトラブルなしで乗り切れるのか?

 

事態が切羽詰まってきている中、社長は単身アメリカに渡っていました。

何の解決策も見いだせないメーカーにMCUの大量提供を要求していたのです。

 

技術担当の粘り強い検証で、システムの負荷が不具合を引き起こしていること

はほぼわかっていました。そして、それを解消するには負荷を軽減するしか

ないということも。

 

既に正月の会議はすべて予約いただき、予備機を除いて全てのMCUがほぼフル稼働

する見込みとなっていました。しかし、これは自殺行為です。必ず何台かのMCU

で不具合が発生するでしょう。

 

すでに予約がいっぱいの状態から設備に余裕を持たせるにはMCUを大幅に増設

するしかありません。社長は購入元のメーカーとOEM元のメーカーに働きかけ

23台のMCUを日本に送らせる事に成功しました。

今まで31台で運用していたので大幅に設備に余裕ができます。

 

しかし、今までの経緯を考えると数さえあれば大丈夫というのは甘過ぎます。

全ての機器の動作を入念に確認し、様々なパターンのテストを行います。

しかし、お正月はお客様の1000台以上のテレビ会議システムが一斉に

接続してくるわけです。ここまでのテストはさすがに行うことができません。

 

今まで辛酸を嘗めてきた不具合の経験や、試行錯誤から得た知見、慎重に検討

した運用方式に加えて、オペレーターの経験値の全てを正月の2日間に向けて

集めました。

 

一方、運用をより安全に行うため、お客様のご利用方法も通常とは一部変更を

お願いする部分も出てきました。営業担当はその全てについてお客様に説明し、

了解をいただいてきました。

 

営業担当者「正月の会議は安全な運用のため、是非○○のやり方でお願いします。」

お客様「それはこちらの負担も大変だ。他のお客様の関係で変更するんじゃない

だろうね?」

営業担当者「そんなことはありません。安全に運用するため是非お願いしたいのです」

お客様「わかりました。」

ずいぶんのお客様に無理を聞いていただきました。

 

これらはすべて日々の会議の運用を行いながら実施したため相当な負担がかかり

ましたが、社員も皆、正月の会議がうまくいかなかったらサービスの存続ができ

ないことが痛いほどわかっていたので必死に対応しました。

 

 

そしてついに年末年始。

 

ここまできてオペレーションミスはあり得ません。

会議の設定・チェックを2日かけて入念に行います。

全て手作業なのです。

 

そして1月3日。

翌日に年始会議を控え、主だった社員は神田明神に集まりました。

やることは全て行いました。後は神頼みしかありません。

 

 

1月4日は技術担当者は朝6時、営業担当者は朝6時半に会社に集合です。

MCUで正常に会議が始まっているか、お客様が接続をしているかを会議が

始まるごとにチェックするのです。

そして、何かあった時の緊急対応の担当も準備をしています。

 

7時に最初の会議が始まります。7時半を過ぎ、8時前が最初のピークです。

一斉に約50の会議、600のテレビ会議端末の接続が始まります。

MCUのオペレーション端末の前でペアの担当者がそれぞれのMCUで開始して

いる会議の状況を確認しています。

 

そして、8時半、9時、10時と過ぎて、少しずつ会議が終了し始めます。

そして12時には特別体制の解除となりました。

なんとか1日目はトラブルなしに終了しました。

しかし、まだ1月5日が残っています。油断はできません。

 

1月4日の会議終了後、1月5日の会議の設定・チェックを行います。

その後すべてのMCUの再起動。

入念に準備はできました。あと1日。

 

 

1月5日も前の日と同じように始まりました。

8時を過ぎ、9時を過ぎ、10時を回った頃に少しホッとした空気が流れ

始めます。

そして12時にやはり特別体制の解除となりました。

 

ノートラブル。よかった。

 

あれほどまでに暴れていたMCUが素直に動いてくれました。

なんだか信じられない思いでした。

 

5ヶ月間の悪夢ようやく終了。

社員にはものすごいスキルと経験が残りました。

 

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