多地点間でテレビ会議を行う(その2) ➖ 専用MCUの利用

2019年1月21日

MCU導入のメリット

「専用のMCUってテレビ会議システムに内蔵のMCU機能とどう違うのだろうか?」と思われると思います。多数のテレビ会議システムをつないで映像・音声・資料共有の会議を行えるという点では同じとも言えます。
しかし、専用の機械ならではの機能がたくさんあります。

(1)多彩な画面分割パターン

目立つところでは各拠点を表示するための画面のバリエーションです。参加拠点が多くなってくると参加者すべてを表示するのは現実的ではなくなります。100拠点参加している場合にも100拠点をすべて表示して会議をしたいという要望はほとんどありません。
「メインの拠点だけ表示してほしい」とか、「主要な拠点のみ表示したい」「話をしたところは表示されないと困る」などいろいろな要望が出るので、それに対応した機能あります。だいたい数十くらいのレイアウトパターンがあり、それを会議ごとに選択して表示することができます。

画面レイアウトの例

(2)多様なテレビ会議端末の接続

多数のテレビ会議システムが参加するとなると、いろいろな種類のテレビ会議システムが混在することになります。基本的にはすべて国際標準のITU-T H.323という規格に対応しているので映像・音声のやりとりは問題ないのですが、最新の機器と古い機種が混在した場合にはなるべく品質を落とさずに会議をしたいという要望が出ます。
HD対応の機器での会議に1台だけ古いSD対応の画質の機器が参加した場合にはテレビ会議システム内蔵のMCUだと全拠点の品質がSD対応になってしまいますが、専用のMCUの場合にはHD対応の機器同士はHD品質、SD対応の機器はSD品質という形に調整して表示することができます。

(3)会議のコントロール

拠点数が増えてくると、すべての参加拠点が画面に表示されるわけではなくなってくるので、会議開始時にどこが参加しているのかわからなくなります。もちろん会議に参加して点呼をとるという方法もありますが、かなり時間がとられてしまうので、MCUにPCでアクセスして会議の情報を確認したりコントロールする機能がついています。

Polycom RMXシリーズ管理画面

MCU導入の条件の確認

さて、「拠点数も多いし、やっぱり専用のMCUを導入する必要がある。」となったときに何を考える必要があるでしょうか。

導入時の条件の確認として大きく2つあります。「MCUの同時最大接続数」と「MCUの運用方法」です。

導入するMCUの同時接続数

1つ目は最大何拠点接続可能なMCUを導入するかです。組織内にテレビ会議システムが30台あり、同時に30台を接続した会議も実施するという運用なら考える必要はありません。もちろん、同時30台接続が可能なモデル・ライセンスを購入する必要があります。

悩ましいのがテレビ会議システムの台数すべてを接続する会議は実施しない場合です。テレビ会議システムは50台あるけれど、会議自体は10台参加程度の会議が中心で、並行して3会議程度の運用が見込まれる、といった場合です。同時に30台接続できれば大丈夫そうですが、想定以上の利用があると困ったことになりそうです。やっぱりその場合には50台接続できるモデル・ライセンスを購入すると安心ですが、同時接続数は基本的に費用に直結するので悩ましいところです。

MCUの運用方法

MCUの運用方法は導入するMCUの同時接続数によって大きく変わります。利用するテレビ会議システムの数と同じかそれ以上(ライセンスの販売形態によってテレビ会議システムの数と同じにはできないことが多いため)の同時接続数が確保されている場合にはどんな利用方法をしても同時接続数を超える心配がありません。

しかし、予算面や想定される利用シーン(そんなにたくさんのテレビ会議システムが同時に会議に参加する可能性はないと思われるなど)によって同時接続数をテレビ会議システムの数よりも少なくした場合には予約制にするなどの管理が必要になります。簡易的には一般的なグループウェア等を利用しての予約管理を行うこともできます。しかし、実際に予約した以上の拠点数が参加してしまったり、予約もしないで利用する参加者が万一あって他の会議参加者が予約していたのに参加できない、といった不具合が発生することを完全に防ぐにはMCUの機能を使って予約管理する必要があります。

MCU標準のスケジューラーもありますが、エンドユーザ向けにはなっていないので予約を行う管理者を設置したり、サードパーティ製の予約システムを入れたりする工夫が必要になります。正直なところちょっと(場合によってはかなり)面倒です。

予算が許せば接続するテレビ会議システムの数以上の同時接続数を持つMCUの導入がおすすめです。

MCUの選定

それでは現状の専用のMCUはどのようなものがあるのでしょうか。
調査会社の株式会社シード・プランニングによると、2017年度の実績ではシスコシステムズとポリコムの2社で7割以上を占めるとなっています。
「ビデオコミュニケーション市場の市場予測」MCUメーカーシェア
https://www.seedplanning.co.jp/press/2018/2018033001.html

とりあえずハードウェアのMCUはCiscoかPolycomにしておけば間違いありません。

Cisco MCU Codianシリーズ/MCU5300シリーズ

MCUの画面分割レイアウト。全部で42パターン。

Cisco社のMCUは2002年に設立されたCodian社のMCUに源流を持っています。Codian社のMCUは安定性・機能性で他のメーカーのMCUを圧倒し、一気に大きなシェアを持ちました。Codian 4200シリーズ、4500シリーズは日本でも圧倒的なシェアで「MCUといえばCodian」という時期が長く続きました。その後Codian社はTANDBERG社、更にはCisco社に買収され、MCU5300シリーズとして続きました。機能的には十分でしたが、いずれのモデルも1台で最大40拠点程度の接続にとどまったので、大規模な運用にはやや制限がありました。

中古品の購入はこちら → Codian4505

Polycom MCU RMXシリーズ

RMX2000

Polycom社のMCUはRMXシリーズと呼ばれる一連の製品です。Polycom社は15年以上MCUを販売をしています。当初はシェアも高かったのですが、Codian社のMCUの登場で大きくシェアを奪われていました。しかし、2009年にRMX4000が発売になって以来Codianでは実現が難しい大規模な会議をシームレスに行えることからシェアを取り戻しています。最大のモデルではHDの接続で同時240拠点に対応しており、小規模から大規模な会議まで幅広く対応できるのが大きな強みです。

中古品の購入はこちら → Polycom RMX2000

販売中のMCU中古品一覧はこちら→MCU(多地点接続装置)

MCUの使い方は次回に続く。